最近、若手社員を中心に退職代行サービスの利用率が急増しています。
しかし一方で、転職市場における“ブラックリスト化”も懸念され始めているのをご存じでしょうか?
便利さの裏には、あなたのキャリア全体を左右しかねない“信頼の崩壊”が潜んでいます。
本記事では、実例と具体的な注意点を挙げながら、そのリスクをわかりやすく解説します。
目次
【体験談】退職代行で辞めたエンジニアが現れた
以前、ある開発プロジェクトに参画していたときのことです。
プロジェクトは慢性的な人手不足で、先日、仲介会社に依頼してエンジニアの募集を始めたばかりでした。
プロジェクトマネージャー(PM)と数名のリードエンジニアで業務の話をしながら、デスクに積まれたスキルシートに目を通していました。
そんな会話のあと、あるリードエンジニアがつぶやきました。
それを聞いた一同は言葉を失いました。
まさか、これから同じチームで働くかもしれない相手かもしれないと思うと、しばし沈黙が流れました。
面談当日
スーツ姿のその応募者は静かに入室し、自己紹介や質疑応答、案件説明もスムーズに進めました。
見た目や受け答えからは、退職代行を利用したようにはまったく見えません。
PMも採用を確信した様子でした。
しかし、突然PMが何気なく口にしました。
その一言に応募者の表情が固まり、肩が小刻みに震え始めました。
先ほどまでの和やかな雰囲気は一変し、まるで大切な人を失ったかのような沈黙が訪れました。以降、彼は一言も発せず、ただ資料を握りしめているだけでした。
面談終了後の10分ほどで、仲介会社から連絡が入りました。
「本人が選考を辞退したいとのことです」
退職代行を使った奴と一緒に働きたくない
PMによれば、「退職代行で辞めたという事実がわかった時点で、不採用は決まっていた」とのことでした。
プロジェクトが忙しい時期に、チームメンバーが突然いなくなると、残されたメンバーは、その分を稼働量を増やしたりパフォーマンスを高めたりしてカバーしなければなりません。
しかし、単に忙しくなるだけで、恩恵はありません。
プロジェクトで残されたメンバーが「自分たちが尻拭いをさせられる」と感じられるのも無理はないでしょう。
退職代行で前職を辞めた人と一緒に働きたいという人は皆無でしょう。
「普通の退職」と「退職代行」の大きな違い
長く働いていると、偶然、以前の同僚やプロジェクトメンバーと再会することがあります。
退職理由やプロジェクトから離れた経緯をお互いに薄々理解しているため、再会しても気まずさはなく、むしろ昔話に花が咲くかもしれません。
ところが、退職代行を利用して辞めた人の場合は状況が異なります。
退職代行を使った側には後ろめたさが残り、使われた側にも「今さら恨みつらみはないにせよ接しにくい、どう扱っていいか分からない」という気持ちが生まれがちです。
さらに、再び同じプロジェクトで顔を合わせた際には、「また退職代行で途中離脱するのでは」という疑念が拭えません。
退職代行を利用する最大のリスクは、今後のキャリアにおいて「自分が退職代行で仕事を放棄した事実」を知る相手と再会する可能性があることです。
業界は狭い―退職代行利用者の転職で注意すべきポイント
私自身は、単なるエンジニアですが、それでも、これまでに3回ほど、退職代行を使って退職した方と遭遇しました。
いずれのケースも、志願者として面談をした際に「過去に退職代行を利用していた」という事実がバレて、不採用に至っています。
エンジニアの私でさえこうした経験があるのですから、人事担当者ならなおさら退職代行を利用した応募者と面接の場で多く出会っているはずです。
したがって、一度退職代行を利用すると大手や有名企業への転職は極めて困難になります。
その結果、前職よりも規模やブランドが劣る企業にしか再就職できず、年収や待遇が必然的に低下する可能性が高いのです。
さらに退職代行を利用すると、転職先の選択肢が大きく狭まります。
以下のような企業への転職は避けるべきです。
- 以前勤めていた会社と同じ業種の企業
- 以前の会社の近隣企業
以前勤めていた会社と同じ業種の企業
過去の「退職代行利用」を知る人と再会しやすく、面接でも不利になる可能性が高まります。運良く面接を通過したとしても、就業中に退職代行の履歴がバレる可能性もあります。
以前の会社の近隣企業
旧知の社員や関係者と遭遇しやすくなります。
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前職の勤務地が「東京」の場合:次の就職先は「東京以外」を検討する
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前職の業界がITの場合:「IT業界以外」を選ぶ
退職代行を利用した代償として、一度キャリアをゼロから築き直す覚悟が必要です。
退職代行後の再就職・転職では、業界や勤務地を慎重に選び、新たなスタートを切りやすい環境を選ぶことが重要です。
退職代行で失うのは「信頼」という十字架
退職代行は手軽に利用できる反面、一度使うと「退職代行で辞めた」という事実が一生あなたにつきまとい、転職市場で大きなマイナス評価を受けます。
業界は狭く情報が瞬時に広まるため、同業他社や大手企業への再就職は難航し、年収や待遇の低下も避けられません。
まるで一度罪を犯した犯罪者が“償い”を一生背負うように、退職代行を利用したあなたも信頼という十字架を背負い続ける覚悟が必要です。
もちろん、ハラスメントや劣悪な労働環境など、どうしても「最悪の選択をするくらいなら…」と退職代行に頼らざるを得ない事情がある方もいるでしょう。
しかし、長い目で見た時、退職代行で得をするのは、結局は業者だけであることも忘れてはいけません。
本記事の体験談や具体例を踏まえ、退職代行の安易な選択がもたらすリスクを改めて認識してほしいです。
