エンジニアがうつ病になるのは、あなた自身のせいではありません。
20年以上、システム開発の現場を渡り歩いてきた私が、何度もそのシーンを目撃してきました。
ある日突然、優秀なエンジニアが現場から姿を消す。しばらくして「うつ病で離脱した」と耳にする。
そのたびに思うのです。「この現場、やっぱりおかしかった」と。
本記事では、100以上の開発現場を経験してきた私の視点から、エンジニアがうつ病になる現場の共通点を赤裸々に語ります!
目次
【体験談】ある現場で、エンジニアが静かに消えた
以前、あるSES案件で参画した現場でのことです。
チームには10名ほどのエンジニアがいて、私は途中からジョインしました。
参画してすぐ、違和感がありました。
朝会では毎回、テックリードが最新技術の話を楽しそうに語るのです。
周囲のエンジニアたちも、競うように技術トレンドの話で盛り上がっています。
そんな空気の中、一人のエンジニアが端のデスクで黙々とコードを書いていました。
Aさんといいます。実装力は高く、仕事は丁寧。ただ、技術の雑談にはあまり加わりませんでした。
笑いながら言った一言でしたが、Aさんの表情が一瞬固まったのを、私は見ていました。
それから2ヶ月ほどで、Aさんは現場から姿を消しました。
「体調不良による長期休暇」という連絡だけが届いて。
問題はエンジニアのメンタルではない
後日、別のメンバーからこんな話を聞きました。
Aさんは技術への「熱量」がチームと合わなかっただけです。
仕事の能力に問題があったわけでも、メンタルが特別弱かったわけでも、ありませんでした。
問題は現場の空気そのものにあった、と私は今でも思っています。
エンジニアのうつ病は「個人の問題」ではない
20年間、100以上の開発現場を見てきました。
その中で、うつ病によって現場を離れたエンジニアも少なくありません。
そして、気づいたことがあります。
うつ病エンジニアが出た現場には、必ず何かしらの「異常な空気」がありました。
「あの人はメンタルが弱かったから」「繊細すぎたから」──そういう言い方をする人もいます。
しかし私は、それは違うと断言できます。
うつ病になったエンジニアが他と違う「異常性」を持っていたのではない。その現場の環境が、人を壊していたのです。
うつ病エンジニアが出やすい現場の特徴
私がこれまでの経験で見てきた、エンジニアのうつ病を生む現場の特徴を挙げます。
① 「技術好き当たり前」の同調圧力がある現場
エンジニアの世界には、技術への熱量を美徳とする文化があります。
もちろん、技術を楽しめるエンジニアは素晴らしい。しかし問題は、それが「当たり前」として強制されるときです。
こういう空気の現場では、ノリについていけないエンジニアは徐々に「浮いた存在」になっていきます。
「自分はこの場にいていいのだろうか」という感覚が積み重なり、やがて心が折れていくのです。
技術が好きかどうかと、仕事ができるかどうかは別の話です。その妙なノリを強制する現場は危険です。
② 生え抜き集団が仕切る現場
同じメンバーが長年にわたり固定されてきた現場には、独特の「内輪文化」が育ちます。
暗黙のルール、内輪の笑い、説明されない常識。
外から入った人間には、何が正解かがわかりません。
「察する」ことを求められる現場は、新参者にとって地雷原です。
何を聞いても「空気読めない」と評価され、何も聞かなければ「積極性がない」と見られる。
どう振る舞っても正解のない環境が、じわじわと人を追い詰めます。
③ ロジハラ上司がいる現場
「ロジハラ」という言葉をご存じでしょうか。ロジックハラスメント、つまり論理で人を追い詰めるハラスメントのことです。
怒鳴ったり侮辱したりするわけではない。ただ、ひたすら「論理的に」詰めてくる。
一見すると「まともなフィードバック」に見えます。
しかし毎日これが続くと、エンジニアは「何を言っても詰められる」という恐怖感から、発言や提案を一切やめてしまいます。
思考停止と自己否定が積み重なり、やがてうつ状態へと進んでいきます。
④ 誰も喋らない現場
一日中、キーボードの音しか聞こえない現場があります。
特にSESの客先常駐では、こういう現場に出くわすことがあります。
集まっているのは別々の会社から来たエンジニアたち。
チームのはずなのに、チームという感覚がまるでない。
次第に、誰も言葉を発しなくなっていく。
誰も話しかけず、雑談もなく、質問すら躊躇する雰囲気。
最初は「集中できていいな」と思うかもしれません。しかし、それが毎日続くと話は変わります。
人間は社会的な生き物です。孤立した環境に長く置かれると、じわじわとメンタルが削られていきます。
「自分はこのチームに必要とされているのだろうか」「何かまずいことをしてしまったのだろうか」──答えのない問いが頭を占領し始めます。
声を出せない現場は、思っている以上に人を追い詰めます。
現場が壊す前に、自分を守る
エンジニアがうつ病になるのは、その人が弱いからではありません。
現場の環境が、人が正常に機能できない状態を作り出しているのです。
もしあなたが今、以下のような状態なら要注意です。
- 朝、現場に向かうのが億劫になってきた
- 自分だけがついていけていないと感じる
- 発言や提案をする気がなくなってきた
- 誰とも話していない時間が長くなった
これは「甘え」でも「弱さ」でもありません。現場のシグナルを、体が正直に受け取っているだけです。
特に、SESは、正直なところ「現場ガチャ」です。 どれだけ事前に情報を集めても、入ってみないと分からないことの方が多い。だからこそ、合わないと感じたら長居する必要はありません。
SESや客先常駐の強みは、現場を変えられることです。合わない現場に居続けることが美徳ではありません。
違和感を覚えたら、早めに動くことが自分を守る最善策です。
※ 現場のストレスで限界を感じたら、一人で抱え込まずに相談窓口を活用してみてください。
→ こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト(厚生労働省)
現場環境こそが、エンジニアの健康を左右する
20年間で私が学んだことのひとつは、「現場を見ればエンジニアの未来がわかる」ということです。
技術力でも、個人の性格でもなく、その人が置かれた環境が、エンジニアとしての成長とメンタルの健康を決定的に左右します。
うつ病で現場を去ったエンジニアたちは、別の環境では生き生きと活躍しているケースも多い。
「あの現場が異常だっただけだ」と気づいた瞬間に、人は、自分を取り戻せます。
エンジニアとして長く働き続けるために、現場の選択は技術スキルと同じくらい重要です。
あなたが壊れる前に、あなた自身が現場を判断してください。その違和感は、きっと正しい。



