“小職“という言葉は、ご存知でしょうか?
[小職]
地位の低い官職。
官職についている人が自分をへりくだっていう語。小官。
(小学館 デジタル大辞泉より)
小職とは、自分をへりくだっていう一人称表現です。
ごく稀に、小職や小生という一人称を、ビジネスメールで使用する人がいます。
私は、小職や小生という一人称は、あまり使わない方がいい、と考えています。
自身の経験を踏まえて、小職や小生といった表現を使わない方がいい理由を書きたいと思います。
小職と名乗るエンジニアに出会った
私は、若手新人エンジニアの頃、SES企業で働いていました。
或る日、30代の先輩エンジニアから、メールが届きました。
「不明点がございましたら、小職までご連絡頂けますでしょうか」
こんな感じの文面でした。
小職という言葉を知らなかった私は、先輩エンジニアに、
小職とは、どういう意味ですか?
と、コミュニケーションの潤滑油的に、聞きました。
先輩エンジニアは、待ってましたと言わんばかりに嬉しそうに、
そんなことも分からないのか、
と言いつつ、丁寧に、小職の意味を教えてくれました。
この30代の先輩である、小職エンジニアは、新人の私から見て、技術力もあるし、コミュニケーション能力も高い、バランスの良いエンジニアという感じの方でした。
こういうエンジニアは、重宝されるんだろうな、という印象です。
(もっとも、新人の視点というバイアスがかかっていますが)
小職メールの周りの評価
30代の先輩である、小職エンジニアは、自社内だけでなく、協力会社にも、小職と書いてあるメールを送っていました。
気になるのが、小職メールを周りの人達がどう見ていたか?
実は、小職メールは、物凄く評判が悪かったのです。
この小職エンジニアに対して、陰口と悪口の嵐でした。
協力会社は、小職エンジニアの事を、陰で、「江戸時代」と呼んでいました。
ちなみに、小職には、次の意味もあります。
[小職]
江戸時代、岡場所や町芸者のもとで見習い・雑用をした女児
(デジタル大辞泉より)
協力会社の人「また、江戸時代からメールが届いたよ!困ったなー」
そんな具合です。
小職という言葉のイメージ
小職って、なんか、堅苦しく感じませんか?
堅物、頑固・・
そして、江戸時代。
先進的なイメージのあるIT業界において、いやがおうでも、「古い人」や「扱いにくい人」のレッテルを貼られてしまう恐れがあります。
自社側の人の間でも、時折、小職に対する違和感の話題が湧いていました。
もちろん、この小職エンジニアがいない時です。
注目すべきは、小職という一人称を使っている人は、このプロジェクトの中で、この人たった一人だけだった、という事です。
(繰り返しますが、この小職エンジニアは、非常にコミュニケーション能力の高い人でした。)
しかし、本人(小職エンジニア)が、いくら、コミュニケーション能力が高く、話術がたけていても、これらの悪評を乗り越える事が出来ない、という事です。
一介のコミュニケーション能力よりも、同調圧力の方が強いのです。
結末としては、小職が原因か分かりませんが、小職エンジニアは、その後、ほどなくして、自己都合退職に至りました。
上司に、「彼がなぜ辞めたのか」を確認したところ、江戸時代に帰ったのだろう、と言われたのを思い出します。
サラリーマンは、”小職”を使わない方がいい
サラリーマンや公務員、つまり、組織に所属する人は、なるべく、”小職”は使わない方がいいと思います。
■小職を使うことによるデメリット
・奇異の目で見られる
・感覚が古い、扱いにくい人、というレッテルを張られる
サラリーマンは、他の人と違う事をやってはいけません。
そういう教訓や学びがあった出来事でした。
ネットで調べると、小職という言葉の使い方の情報がたくさん出てきます。
しかし、「小職という表現は、言語学的に正しい一人称表現であって、尊敬、謙譲・・云々」と語り始めても、実際の職場では、めんどくさい人だなあ、と思われるだけです。
それにしても、このエンジニアは、どうして、自分の事を小職って、言い出したのだろう。
小職を使っている人を見ると、小職を使い始めたいきさつを知りたくなります。
普通、小職って使いませんからね。
極端な言い方をすれば、今の時代で、自分の事を、「拙者」という人はいないですよね。
文学系の学部卒の私も、在学中、自分の事を小職って言っている人は、さすがに、見た事ないなあ。