クラウドソーシングサイトを利用されるフリーランスは、非常に多いと思います。
一方で、SOHOワーカーを対象とした求人サイトもあります。
クラウドソーシングよりも、SOHO系の求人サイトの方が、
提示されている報酬金額が、低い印象です。
利用者は、発注者・受注者ともに、
フリーランス(個人事業主)や小規模法人が、主です。
私は、クラウドソーシングもSOHO系の求人サイトも、両方、使います。
基本的に、求人に掲載されている単価があまりにも低いようなら避けますが、稼働に余裕がある場合は、あえて、そのような案件に応募して、面談にこぎつけた後に、価格交渉をしたりします。
そもそもが、安いということは、未経験者あるいはそれに準ずる初学者をターゲットにしているのでしょう。
経験者は、すぐに引き合いがあります。
内容の無い打ち合わせ
「飯田橋の神楽坂改札前に、d日h時に来てください」
SOHO系求人サイトに応募すると、面接の運びとなり、待ち合わせ先には、
50歳のオッサンが待っていました。
なぜ、50歳と分かったかと言うと、
この求人サイトでは、発注者の氏名や年齢等の個人情報の閲覧が可能だったからです。
神楽坂の坂を登ったところにあった喫茶店は、平日白昼なのに、ガラガラでした。
コーヒーを2つ注文をし、すぐに打ち合わせが始まります。
事前に送っておいた、私のスキルシートは、オッサンの手にありました。
「まず、案件の説明の前に、発注に値する人物かを、確認したいから、自己紹介して」
「はい、システム開発経験が~」
頭の中の引き出しにすでに入っている定型の自己紹介を、三分くらい語ったと思います。
肉付けをして、もう少し語りを伸ばすことも可能でしたが、後半は話を畳み気味でした。
理由は、相対するオッサンの挙動が気になったからです。
オッサンは、
魂が抜けたような無表情でピクリともせず瞬きもせずに、
私の目、一点を、見つめていました。
電池が抜けたようなその様に、
私は、
「長かったですか。すみません」
と付けました。
しかし、オッサンの表情は、変わりませんでした。
「大丈夫ですか」
と、私が言って、意識取り戻したようです。
「僕は、人間を見ることも仕事なんだ。OK。では、案件の説明を始めようか」
そこから、案件の説明が始まりましたが、、
このオッサン、自身の案件を全く理解していませんでした。
というのも、
商流的には、
別に、エンド(発注主)がいて、
それを請け負ったのが、このオッサンのようでした。
(そして、その案件を下請けに出す流れでした。なので、今回、面談中)
金額、案件の難易度、工数、それらを踏まえて、SOHO系案件では珍しい、おいしい案件でした。
エンドが発表した瞬間、誰もが、手を挙げたくなるくらいです。
なぜ、このオッサンが受注することが出来たのかが物凄く不思議でした。
発注者と知り合いか、(これは確認を取ったら違いました)
大風呂敷を広げて受注に漕ぎ着けたか、(こっちの可能性が高いです)
まあ、兎も角、
一通り、まったく内容の無い説明を受け終えてから、
「何か質問はあるか」
と聞かれました。
当たり前ですが、
理解していない人が説明した内容を、理解することは難しいです。
何をやりたいのかよく分かりませんでした。
ふと、
このオッサン
会話の間に、
「僕は、人から、よく変わっている、って言われるんだよねー」
とはさむ、ことに気づきました。
多分、口癖なのでしょう。
私は、進んで質問をして、疑問点を全部、潰すことにしました。
「採用予定の言語やDB等は決定していますでしょうか」
「フレームワークは使用されていますか」
「フロントについてお伺いしてもよろしいですか」
すると、
このオッサンの回答は、、
「おまえ、誰に、向かって口聞いてるんだ。口の聞き方を気をつけろ。この野郎」
でした。
意味が分かりません。。
どうしてこんな狂人のような振る舞いをされたのでしょうか。
考えてみました。
多分、オッサンは、
・自身の説明がよく相手に伝わらなかった=馬鹿にされた、と思った
・私の質問内容が理解できず、キレた
あたりだと推測します。
でないと、論理的な整合性が取れません。
オッサンは、少ししてから、自分があまり理解していないという事実を、
私に勘付かれたと、確信したんだと思います。
おもむろに、自分の経歴を語り出しました。
実際は、経歴というより自慢話でした。
これが物凄く長かったです。。
目に入る位置にあった、アンティークの掛け時計をちらと見て、二度目に見た時には、一時間が経過していました。
話の間に、
「僕、よく人から、変わっているって言われるんだよねー」
というパワーワードを、挟んできます。
結論は、
案件を受けませんでした。
理由は言うまでもありません。
案件が、何がなんだか、分からなかった、からです。
打ち合わせの拘束時間は、三時間。
9割、このオッサンの自慢話。
オッサンは最終的に気持ち良くなっていました。
今度、何時、会える、と聞かれました。
もちろん、丁重に、暗に断りました。
このオッサンは、法人の代表のようでした。
法人代表といっても、一人法人ですが。
ようやく、解放かー
そんな時、
全体的に、腑に落ちなかった面談ですが、
最後、腑に落ちる科白を言われました。
「あー楽しかった。実は、僕、今年に入ってから、初めて人と会話したんだ」
時期は、エアコンの排気熱と灼熱のアスファルトで都市が熱せられる、8月でした。
嗚呼…
案件もこのオッサンがでっちあげた妄想のように思えてきました。。
時間返してくれよ。
