SESには、多重請負、多重下請という闇が、あります。
簡単に言うと、エンジニアとクライアント(エンド)との間に、複数のSES企業が入り込み、不要な過度の中抜き(ピンハネ)や業務上の伝達事項の停滞、契約の煩雑化をもたらします。
SESエンジニアにおいて、多重請負を経験された御方は、少なくないと思います。
ふと、SESの多重請負は、最大で、何次請けまで行き着くのか?を考えた事はありませんか?
私は、「9次請け」の案件を紹介された事があります。
本記事では、多重請負案件を紹介された実体験を踏まえて、多重請負案件の危険性に警鐘を鳴らしたいと思います。
1. SESの多重請負の面談(体験談)
朝の田町駅。
待ち合わせに指定された場所は、みどりの窓口前でした。
現地では、1人、知らない営業が待っていました。
挨拶を交わし、田町駅の三田口から、駅建物外に出ると、営業が3人待っていました。
一人ずつ、差し出された名刺を見ていくと、3人とも、別々の社名でした。
名刺の束を、スーツの胸ポケットにしまって、すぐに移動するのかと思いきや、実際は、時間調整でしょうか、その場で、雑談が始まりました。
一人の営業から、そう言われました。
4人の営業は、終始、ニコニコ笑顔でした。
しばらくしてから、一人の営業がちらりと腕時計を見て、では行きましょう!と、他の三人営業と別れて、移動しました。
歩道橋の階段を降りて、大通りの交差点を渡り、歩いていきます。
営業から、そんなことを言われました。
これから向かう企業も、大手電機メーカーかと思い、
営業はそう言って、少し先のビルを指差しました。
大手電機メーカーが入っているような建物ではありませんでした。
ビルの入り口のところまでやって来た時、隣の営業がキョロキョロ、辺りを見回し始めました。
「お世話になっております」
すると、建物の柱の陰から、営業が2人、現れました。
差し出して来た名刺から、2人とも、別々の会社であることが分かりました。
この営業が、私の全身をしっかりと見て、まあ、大丈夫だろ、と呟いたのを、聞き逃しませんでした。
そして、ここまで連れて来られた営業から、この2人の内、1人の営業に、私は、渡されました。
「それでは、入りましょう」
エレベータに乗って、会社のエントランスで担当者を呼び出すと、打ち合わせスペースに通されました。
ほどなくして、役職者然としたおじさんが、現れて、面接が始まります。
付き添いの営業は、なぜか持っていた私の職務経歴書を、先方のおじさんに渡すと、おじさんは、書類と私の顔を交互に見比べました。
「俺くらいになると、人の顔を見ただけで、すべてが分かるんだ。お前は、合格」
初対面でしたが、おじさんに、確かに、そう言われました。
そこで、採用、つまり、案件成約となるのかと思いました・・
しかし、そうはいきませんでした。
「聞いていないのか?この後、クライアント先で面談を用意しているんだよ。今から千葉に向かってくれ・・」
実は、田町駅前にいた営業からこの会社の打ち合わせスペースで面談したおじさんまで、すべて、私とクライアントの間の商流上の会社だったのです。
この後、「千葉で、面談が組まれている」と言われましたが、私は、辞退しました。
ちなみに、田町駅前からこの会社の面談に行き着くまで、1時間掛かりました。
この1時間の間、商流上の営業達、一人ひとりに、顔合わせを、ひたすらしていったのです。
そして、肝心の案件単金ですが、これらの営業達、まるで、示し合わせたように、はっきりとした金額を言わず、金額をぼやかし続けていました。
恐らく、案件が確定してから、断れないような状況を作って、安い単金で、契約を迫ろうと考えていたのかもしれません。
2. なぜ、「9次請け以上」になったのか?
まず、私が、自社(所属)であるSES企業と繋がったきっかけは、求人サイトに掲載されていた求人に応募したのが契機でした。
なので、私と自社(所属)との関係は、先日面談をしただけの繋がりです。
その面談で、希望条件などを聞かれたので、稼働が空いていて即日稼働を希望していた私は「すぐに稼働開始できる」点が、最重要である事を伝えました。
その面談で、担当者は、「俺は、日本で1、2を争うほどの、人脈があるSES営業だ」と言い出し、その場で、スマホで、電話をかけ始めました。
取引会社らしき人と何やら話をした後、電話を切り、「話はまとまった。明日、田町駅前のみどりの窓口に行け」と言われました。
その結末が、9次請け以上の案件だったのです。
恐らく、この営業、「至急案件を探しているエンジニアがいる」旨を、取引のあるSES企業に伝えただけで、その伝えられたSES企業が、また、別のSES企業にそれを伝えて・・という具合に、伝言ゲームが繰り返されて、最終的に、9次請け以上の案件に、肥大化していったのだと、推測します。
3. 多重請負にならない為に
多重請負案件に当たらないようにするには、下記に気をつけるべきです。
・「直請け」を謳っている案件、SES企業と取引をする
・中小零細SESではなく、ある程度、規模や実績のあるSES企業を選択する
SES企業から、案件を紹介された時、必ず、商流を確認すべきです。
良質な案件は「直請け」などの文言や説明が、事前にありますが、商流深めの案件は、その辺を隠そうとしています。
また、数多ある、中小零細のSES企業は、往々にして、商流が深くなりがちです。
中小零細SES企業は、互いに、案件を融通し合って、案件とエンジニアのマッチングを図ろうとする傾向がある為です。
したがって、SES企業を選ぶ場合、ある程度、規模や実績のあるSES企業を選ぶ事も大事です。
4. まとめ
・求人応募で繋がった、零細SESに、早急に案件を探していると伝えたら、9次請け以上の案件を紹介された。
・クライアント面談(エンド)に行き着くまでに、別々の会社の営業達に、挨拶をしていった。これらの営業達が、商流上に入り込んでいるSES企業の面々。
・クライアント面談(エンド)に辿り着く前に、案件を辞退した。
■ 今回、紹介を受けた案件の商流は、以下の流れです。参考までに、掲載します
自社(所属のSES企業)
↓
営業×1 田町駅みどりの窓口で、待ち合わせ
↓
営業×3 田町駅三田口、出てすぐで、待機
↓
営業×2 上位SES会社前で、待機
↓
営業×1 上位SES企業(面談)
↓
(ここで辞退)
↓
営業×複数? 千葉で面談が組まれていた
↓
その後、クライアント(エンド)面談を想定
※ 商流を辿ると、9次請け以上の案件になります
私は、今回の案件は、途中で、辞退してしまった為、最終的に、何次請けまで行き着くのかは、分かりませんでしたが、少なく見積もっても、9次請け以上には、なっていました。
果たして、9次請けの案件を請け負ったら、どんな待遇・条件、稼働環境になるのか、怖いもの見たさで、少し、気になりました。
多重請負案件には、絶対に、関わってはいけません。
デメリットしかありません。
尚、筆者、以前、8次請けで働いていたエンジニアと、会ったことがあります。