クラウドソーシングで繋がった発注者と面談の運びになった時、
私は、転職の面接とは違った緊張感があります。
この場合、
発注者といっても、
- 従業員を雇っている法人の経営者
- 一人法人
- フリーランス(個人事業主)
実に、様々です。
今回のお話の発注者は、
「従業員を雇っている法人の経営者」
です。
したがって、
普通の転職面接と似たような形で面談は進むのかな
と考えていました。
あなたと契約します
場所は新宿御苑で、雑居ビルの中層階。
エントランスには、呼び出し用の電話もあります。
現れた社員の背中についていき、応接室に通されました。
ほどなくして、
やり手風の女性が、ノートPCを持ってやってきました。
名刺には、副社長とあります。
一方で、私は、その時、フリーランスなりたてということもあり、恥ずかしながら、名刺を、まだ、作っていませんでした。
私は、名刺交換の際、近日中に作る予定であると、正直に、お伝えしました。
少し戸惑った反応をされました。
「名刺を持っていない=信用がない」と思われたのか。
一応、身分証明書である、運転免許証を差し出すと、
そこまでしなくても大丈夫ですよ。
とそれからは和やかに、打合せが始まりました。
プロジェクターが、スクリーンにPC画面を映し出します。
Redmine の課題管理一覧でした。
案件は、これらの課題、発生している不具合を改修してほしい、というものでした。
「それらの不具合の改修方法が全く分かっていません。でも、可及的速やかに直したいんです」
課題は、6件ありました。
副社長さんに、1件ずつ、詳細内容を説明していただきました。
その間、私のことを評価いただいたのか、
「あなたに発注するつもりでいる」
と何度も言われました。
発注いただけるならばと、
1件ずつ説明を受けながら、
- 不具合の原因
- 直し方
- 改修にはどのくらいの工数がかかるのか
事細かく回答を求められ、正直に、それらに対して回答をしてしまいました。
※契約をしていない段階で、ここまでやるべきではなかったと、今では、反省しております。
面談は、1時間くらいで終了しました。
副社長も、不具合の解決の目処が立って、安堵されていました。
「ありがとう。この件は、あなたに発注します」
と言っていただきました。
案件が受注できて、私も安堵しました。
その時でした……
突如、登場人物追加
ノックもなく、扉が開いて、おじいちゃんが、入室してきました。
おじいちゃんは無言で、
私の顔をじっと見つめてから、
懐から名刺入れを取り出しました。
名刺には、社長とありました。
私は、先ほど同様に、名刺がない旨を伝えました。
すると、受け取った名刺を引ったくられて、
「我が社は、名刺を持っていない、素性が誰だか分からない奴とは契約しない。怪しい奴は、さっさと我が社から出ていってくれないか。出て行かないなら警察に通報するぞ」
と、淡々と言われました。
先ほど同様に、運転免許証を提示したのですが、
社長はそれを見ようともせず手を振って、
「運転免許証は偽造している可能性がある。私が見たいのはしっかりとした名刺だ」
と仰いました。
- 運転免許証 → 個人の識別には無効
- 名刺 → 個人の識別に有効
初めて出会った論法であったので、少し戸惑いました。
仕方がないので、
私は、この社長の言う通り、ブリーフケースを手に、この会社を後にしました。
応接室を出る時、
「それならば、初めに言ってくれませんか。時間の無駄です」
くらいのことは言い残しました。
考えてみれば、副社長との面談で、大方、改修方法を教えてしまっているんですよね。。
つまり、タダで、仕事をさせられたようなものです。
発注者側からすれば、タダで、仕事をさせることに成功したということです。
恣意的とは、考えたくありませんが、、
あくまで、あの時、社長が入ってきたのは、偶然だ、と思いたいです。
偶然でないならば、もう人を信用できなくなります。
面談は、気を張って挑むべきです。
油断をすると、いつの間にかタダで仕事をさせられている、なんて場合もよくある話だと思います。
最後に、
今回のこのような事案を、どうすれば回避できたのか、
と後になって考えてみましたが、
やはり、回避は難しかっただろう、
という結論に達しました。
それは、道を曲がった時、その先に現れる人間を、こちらから選ぶことが出来ない理論と似ているように感じます。
それでも、災厄を減らしていく為の努力をするに越したことはありませんね。