私は、オフィス街に住んでいます。
自宅兼事務所の入っているマンションを出ると、「なか卯」が目に入ります。
この店は、二十四時間営業でしたが数年前から深夜帯から早朝まで閉店しています。
オフィス街ゆえに、深夜帯に人が入らないのが理由かもしれません。
この店、営業時間帯の80%は、ガラガラです。
但し、12時から13時の間だけは、店先にまで人が溢れるほど、超絶、行列のできる店になります。しかし、不思議ですが、13時過ぎるとガラガラに戻ります。
この店、自宅から至近という理由で、たまに利用します。
私は、朝食メニューにある、納豆系の定食をよく食べます。
ガラガラの店内で、ゆっくりと食事を取ることができます。
落ち着いた朝の時間に、響くクレーム
実はこの店、頻繁に、喧嘩があります。
少なくとも、私が利用するときは、高確率で目撃します。
特に、昼の12時から13時の間です。
「何で俺の方が先に注文したのに、あの席の奴の方が先に来るんだよ」
こんな具合に、激昂した人を何度か見ました。
牛丼屋の揉め事は、この手の話が多いと思います。
今回、私が見たのは、朝の時間帯でした。
ガラガラの店内は、カウンターに私と対角線上に
40代半ばくらいの、サラリーマン然とした男性がいました。
出勤前に腹ごしらえをしておこうという感じでしょうか。
私が、朝定食を注文して待っていると、
視界に入るオジサンに、膳が運ばれてきました。
運んでくれる店員は、外国人のアルバイトでしょう。
オジサンは、置かれた膳を見て、
「おい」
と、去り行く店員の背中に、言いました。
店員が振り返ると、
オジサンは、無言で、膳を、指差します。
指の先は、目玉焼きでした。
「これ半熟にしてください」
店員が、その目玉焼きが乗った器を交換しようとすると、
「いや、全部やり直し。目玉焼きだけ変えても、それを待っている間、ご飯や味噌汁が冷えちゃうでしょ」
結局、全部、奥に引っ込めました。
作り直したかは定かではないですが、間も無く、改めて膳を持ってきました。
オジサンは、膳を注視してから、
「やり直し」
と言います。
今度は、目玉焼きの焼き加減が、よろしくない、云々、が理由でした。
また、店員が膳を引っ込めます。
私が、自分の朝定食を9割ほど、食し終えたあたりで、オジサンの元へは、
3度目の膳が運ばれてきました。
そこで、オジサンは激怒しました。
目玉焼きの焼き加減が余程、気に入らなかったようです。
店員に対して、罵詈雑言を浴びせました。
当初、この「なか卯」の本部の者が来て、
店員の接客チェックを抜き打ちでやっているのか、と勘ぐりましたが、
それが誤りであることが、激怒の最中のオッサンの言葉で分かりました。
「俺は、個人で法人を経営している。いわゆる社長だ。お前より地位は高い。人を見る目は誰よりある。君みたいに目玉焼き一つきちんと焼くことのできない無能なアルバイトは、私の会社では即解雇だ」
それで、また作り直させていました。
4度目の膳が運ばれて来る前に、流石に私は食べ終えてしまい、二人のやり取りの続きが、どうなったかは分かりませんでした。
帰り際、券売機で、社長が食べていた目玉焼き朝食の価格を見たら、290円…
このオジサン、
本当に経営者ならば、もう少し、時間を有意義に使うべきだと思いますが。。