オフィス街

トナラーを真剣に考察してみた

ガラガラの空間、あなた以外に誰もいない空間、というと、

平日早朝のコワーキングスペースや休日オフィス街の喫茶店を思い浮かべるでしょう。

誰もいません。

適当な席について寛いでいます。

すると、現れた見知らぬ人が、あなたのすぐ隣の席に着きます。

 

この人を、トナラーというらしいです。

 

今回、トナラーに着いて、真剣に考察したいと思います。

 

 

1.トナラーとは一体何者か

 

ネットで「トナラー」について調べると以下の説明を見つけました。

電車やバスなどあらゆる場面で、ガラガラな状況にも関わらず、他人のすぐ隣に場所を取られる方がいる。そういった方のことをネットでは「トナラー」と呼ばれているようだ。

トナラーとは、隣に座る人という意味のようです。

日本語の「隣(となり)」と、英語で〜する人を表すの「er」を結び付けた、いわゆる造語です。

 

単純に、「トナラー = 隣に座る人」と誤解してはいけません。

トナラーとは、

ガラガラなのに、あえて他人のすぐ隣の場所を取る人

という人を指します。

 

ネットを見ると、電車やバス、喫茶店に、コワーキングスペースなどで、突然、トナラーが現れて、不愉快な思いをした人の書き込みが散見されます。

 

また、トナラーは車の場合もあると言う。

高速道路のサービスエリアや道の駅の駐車場などで、ガラガラにも関わらず、自分の車のすぐ隣に駐車をする方もいるようです。

ネットでは、電車や喫茶店などの場面で遭遇する「人物」と駐車場で遭遇する「車」を、同じトナラーと扱い言説が形成されているようですが、

これら「人物」と「車」のケースは、やはり、異なる背景があると考える方が自然ではないでしょうか。

 

トナラーについて、考察を繰り広げている記事は多くあります。

それらは、往々にして、トナラーに対する怒りや不快感、あるいは、その行動の不可思議さを訝るもので占められています。

 

本記事では、トナラーが生成される原因について考えてみたいと思います。

トナラーには、前述の通り、「人物」の場合と「車」の場合の2パターンがありますが、今回は、電車や喫茶店などの場面で遭遇する人物を取り上げて、考えていきます。

 

2.私のトナラー体験談

 

フリーランスになってから、不思議に思ったことがあります。

 

電車内や飲食店、あるいは、病院や役所の待合所でも図書館でもコワーキングスペースなど、ガラガラで、自分以外誰もいない、ということがあります。

私は、適当な席に着きます。

しばらくすると、他の客が入店してきます。

すると、他に誰もいないような空間なのに、よりにもよって、私の横の席につく人がいます。

 

これは、とてつもないストレスです。

 

他の席がガラガラなんだから、そっちいけよ、もっと広く使えよ、と。

新幹線の指定席で、私は、この席を予約したんです、ではあるまいし。

 

この出来事は、この御方だけの特別で例外的なことではなく、私は、これと似たようなトナラー的被害を、何度も経験しています。

 

例えば、

誰も乗っていない貸切のような、日曜の電車の或る車両で、ロングシートの端に座っていると、

次の駅で乗ってきた、サラリーマン風のオジサンが、わざわざ、遠くから歩いてきて私の隣に着きました。

その車両に乗っているのが、私とこのオジサンだけなんです。

なのに、どうして、この見知らぬ人と密接しなければならないんだというストレスが生まれます。

 

また、或る日は、ガラガラの飲食チェーン店に入店した時です。

店員さんが、「誰もいないので、テーブル席、使っていいですよ」と言ってくれて、私は一度断ったのですが、この時間帯誰もいないし、まあいいか、とテーブル席に、着きました。

しばらくすると、男性が一人、入店してきて、なんの躊躇もなく、私のテーブルに着きました。

私とこの男性が向かい合う形になりました。他にも席は、たくさんあります。

もちろん、この男性と私は知り合いでもなんでもありません。

 

何故。

 

3.トナラーが生成されるプロセス

 

では、なぜ、トナラーは、このような行為を取るのでしょうか。

 

調べると、

  • オジサンが若い女に近づきたいがためにトナラーと化す
  • 寂しがり屋なので、人の側に近づいてくる

という言説を、見つけることができました。

 

しかし、私は、必ずしも上記の理由ではないと考えています。

 

オジサンが若い女に近づきたいがためにトナラーと化す

これは、トナラーではありません。痴漢です。

 

寂しがり屋なので、人の側に近づいてくる

相手は見知らぬ人で且つ交流を示すような意思も皆無です。

これも、的を射ているとは言い難いです。

 

確かに、私は、当初、嫌がらせ目的や他者への好意などの理由で、トナラーになると考えた日々もありました。

 

しかし、トナラーを注意深く観察してみると、

トナラーに共通しているのは、無自覚のように見える、という点です。

まるで、隣にいる人に対して、人ではなく風景であるかように、振る舞います。

 

それを踏まえて、

私は、規律と訓練によって、トナラーとしての主体が生成されると考えています。

 

キーワードは、都市生活満員電車です。

 

https://futsuuno.com/2019/09/14/addict-crowded-train

でも書きましたが、

地方在住の方など都市での暮らしから離れた所にいる方から見れば、

満員電車の光景は奇異に映ります。

一方で、都市で、毎日、通勤や通学で、満員電車を利用している者にとっては、単なる、日常の光景です。

地方から上京してきたばかりの人が、満員電車を前にして、嗚呼、もうこれ以上乗り切れない、と一本やり過ごして、空いている次の電車を待とうとする、

一方で、都市生活者達は、当然のように、見ず知らずの他人と身体を密着させ、その隙間ない空間に、乗り込んでいきます。

満員電車における未熟者と熟練者を比較すると、人との距離の取り方が異なっていることが分かります。

 

前述の例を踏まえて、極論を言えば、下記のようになります。

  • 満員電車未熟者は、他者と適度な距離感を保てる
  • 満員電車経験者は、他者と過密してもなんら違和感を抱かない

 

都市の満員電車という装置に組み込まれることによって、

知らず知らずのうちに、トナラーとしての身体が、強固に、生成されていくことになる

と考えています。

 

そして、気付いた時には、トナラーとして身体が完成しているのです。

 

満員電車は、トナラーになるための訓練として機能しています。

 

4.トナラーを回避する方法は

 

トナラーの誕生が都市に根ざしているというロジックならば、トナラーを回避する方法論はあるのでしょうか。

本節では、都市で生活をするうえで、客体としてのトナラーを回避する方法を考察します。

 

結論を言うと、都市生活を送るうえで、トナラーを回避することは不可能です。

都市で、見知らぬ人と出会わずに、生活を送ることは困難だからです。

それを踏まえて、どうしてもトナラーを回避したいのならば、下記の方法が思い浮かびます。

  • 自宅にいる
  • 田舎に住む
  • 自分もトナラーになる

 

自宅にいる

自宅にいれば、極力、見知らぬ人に出会わずに済みます。

自宅で作業ができる、SOHOやフリーランスは、生活からトナラーを排除できる働き方だと思います。

もちろん、引きこもりというライフスタイルも、トナラーを遠ざけることができます。

 

田舎に住む

トナラーは、都市の存在です。

それならば、田舎に移住するのも一つの手です。

田舎にトナラーはいません。

「いや、田舎にもトナラーはいるぞ」

と反論がくるかもしれませんが、

田舎にいるトナラー的な存在は、もはやトナラーではなく、別の言葉で定義付けられる不審者です。

 

自分もトナラーになる

自分もトナラーになってしまうのも、解決策の一つです。

客体としてのトナラーに不愉快を感じるならば、自分自身も、トナラーになってしまえば、その不愉快は消えて無くなります。

トナラーになる方法は、前述した規律と訓練によって成し遂げられます。

但し、現在のあなたが、トナラーに対して抱いている嫌悪感を、今度は、そのまま、現在のあなたのような他者から向けられることになります。

しかし、その時は、トナラーとして育ち切っているので、そのような他者の目すら気にならなくなっているはずです。

思う存分、ガラガラの電車や喫茶店で、見ず知らずの人に密着してください。

 

5.おわりに

 

トナラー問題を考察してみて、

私は、フリーランスになることをオススメしたいと思います。

常駐型ではなく、時間や場所に拘束されない、働き方です。

それによって、都市が生成するトナラーの主客の問題から解放されるからです。

 

当然、誰もが、今すぐにフリーランスになることは、難しいでしょう。

それに、人生においてトナラーを回避したいという事情のみで、フリーランスになるのは、あまりに現実的ではありません。

それならば、ある程度、トナラーと折り合いをつけて生活していく、それが現実的な指針になるのだろうと考えております。

以上です。

ABOUT ME
普通のフリーランスエンジニア マノリさん
1981年生。早稲田大学卒。秋葉原(外神田)在住。フルリモートで作業中。昼は人で溢れかえり、夜は誰もいなくなる電気街で、仕事を頑張る。趣味は、小説と散歩